2016年3月7日月曜日

【超訳】元経営者の ハーバード大学教授 Bill George が語るマインドフルネス



※ こちらの記事は Mindful Leadership: Compassion, contemplation and meditation develop effective leaders を訳したものです

マインドフルリーダーシップ
  ~ 想いやり、熟考、そして瞑想が良いリーダーを育てる ~



近年、アメリカにおけるビジネスリーダーに対する信頼が揺らいでいます。
一部の経営者たちは、組織を健康で良い状態で維持するよりも、どこかで私益を優先していたように思います。企業が危機に直面した時、彼らは自分たちが社員に対して実行してきた行為の責任を取ろうとはしませんでした。新聞をにぎわす大企業のスキャンダルは、その氷山の一角であるにすぎません。

その結果、ビジネスリーダーや政治家に対する信頼というものは、過去の10年間で大きく失われたと私は感じています。2009 National Leadership Index  によるとアンケート回答者の69%が アメリカにおいてリーダーシップの危機が訪れていると思っています。政治家、メディア、金融、そしてビジネスリーダーにおいて、もっとも低い結果が出ました。その傾向は欧州でも同じでした。

"この20年間、あまりにも多くのリーダーが 彼らの特性によってではなく、カリスマ性によって選ばれてきました。実績よりもスタイルで、そして尊厳よりも印象で…
一旦 失われた信頼を回復するのは容易ではありません。問題の根源は、強いリーダーが存在していなかったからではなく、間違ったリーダーを間違った理由によって選出してしまったからです。この20年間、あまりにも多くのリーダーが 彼らの特性によってではなく、カリスマ性によって選ばれてきました。実績よりもスタイルで、そして尊厳よりも印象で…。結果として、彼らが本性を表した時に驚く必要がなぜありましょう?



リーダーシップの失われた10年

リーダーたちが信頼を失う時代は”リーダーシップの失われた10年”と呼ぶにふさわしい事態であると考えています。2002年のITバブル崩壊、会計基準を守らずに倒産したEnron や WorldCom。そしてグローバルの金融マーケットを崩壊させた2008年はリーダーシップの欠如がもたらした惨事です。

この時代のリーダーたちが、これまでに培われた強い組織を近視眼的な成果を追及し、私益を優先したことによって崩壊させてしまったと私は考えています。Medtronic のCEOを退任してから、私は自分の世代のリーダーたちがなぜここまで腐敗してしまったのか、それを調べてきました。

その失敗を観察していると、これらのリーダーたちのIQ (Intelligence 知性)が足りなかったから危機や崩壊が起こったとは考えにくい。逆に、言葉や立ち居振る舞いから見え隠れする彼らのEQ (Emotional Intelligence 感情的知性) の足りなさがそれを招いたと思うようになりました。失敗したリーダーたちの多くは自分自身や自分の活動を客観的に見ることができていません。彼らは自分のやる気の源泉が何にあるのか深いところでは理解しておらず、自分が持つ恐怖や失敗経験と向き合うことができないのです。これは、結果として危機に直面した時、あるいは 成功しなければならないという大きなプレッシャーの下で精神的な不安定をもたらします。場合によっては、自分自身を深く理解しないリーダーは、成功と報酬、すなわち金、権力、そして名誉という誘惑に負けてしまうのです。




真のリーダーが必要とされる時代

"正真正銘のリーダーとは、嘘偽りのない意図を持ち、そして自分たちがリーダーシップを発揮するのは顧客、社員、投資家のためであるとわかっています。私益のためではありません"
"正真正銘のリーダーとは、嘘偽りのない意図を持ち、そして自分たちがリーダーシップを発揮するのは顧客、社員、投資家のためであるとわかっています。私益のためではありません。彼らは、それを常に自問自答すべきです。内的、外的なモチベーションの均衡を保ち、信頼を得られる関係を築き、自らを律する必要があります。

このリーダーシップのあり方は、企業が自信を取り戻すためには組織のあらゆるレベルで起こる必要があります。21世紀においてはコントロール型の統制組織ではなく、社員をエンパワーメントすることが重要なのです。リーダーは周囲を刺激し、今後の挑戦に挑むことができる自信をつけさせる必要があります。

さらに、真なるリーダーは感情的知性(EQ)を高める必要があります。ダニエル・ゴールドマンが彼の著作の中でも述べているように、EQの根幹にあるのは セルフアウェアネス(自己認識)、つまり深いところで自分自身を知ること、自分が他人へ及ぼす影響を考えられることです。私の経験上、リーダーたちの多くは何年もかけてこのセルフアウェアネスを育成しています。多くのケースでは、成功への執着や他人の目を気になるなどの雑念によって邪魔されてしまうのです。



マインドフルネスを開発する

セルフアウェアネスを高めるために、私はマインドフルネスのコンセプトについて考えてきました。
マインドフルネスは、仏教が瞑想を通して高めてきた手法で、私たちのマインドがどのようなメカニズムで動くのかを教えてくれるものです。リーダーが批判される心配を持つことなく自分自身と向き合え、ロジカルに自分の経験とつなぎ合わせることでセルフアウェアネス高めることができると考えます。
"マインドフルネスは、リーダーたちに「今、ここ」に存在すること。そして自分自身について知り、自分が及ぼす他人への影響を考え、ストレス度合などの状態に敏感になることを教えてくれます”

マインドフルネスは、リーダーたちに「今、ここ」に存在すること。そして自分自身について知り、自分が及ぼす他人への影響を考え、周囲の状況に敏感になることを教えてくれます。マインドフルなリーダーは、自分や他人との関わりをより深く理解し、効果的に組織を共通のゴールへと導くことができるのです。
私は、30年間 定期的に瞑想を続けてきました。これは、宗教的な理由やスピリチュアルな儀式とは関係なく、ストレスのない状況に自分を置き、自分を律するためです。瞑想は、私が自分のリーダーシップを発揮する上で最も重要なものとなりました。マインドフルネスは、私のセルフアウェアネスを高め、自分自身や他人に思いやりを持つことを教えてくれました。さらに、プレッシャーのかかる状況や不確実性の高い状況下でも穏やかに、そしてクリアに頭を保つことができました。
瞑想を続けると、私たちは自分が置かれた状況を客観的に理解し、ストレスに過剰反応することなく思いやりを持てるようになります。そして、厳しい状況下でも穏やかに よく考えた結論を出せるようになるのです。現在では、瞑想のほかにも祈りやヨガ、セラピーなどその他の手法も取り入れられています。
最近の神経系の研究では、瞑想が人間の脳のEQを伸ばす領域に良い影響を及ぼすことが分かってきています。"Driven to Lead" では、マインドをその場に必要とされるリーダーシップのあり方に「リモデリング」する方法について語られています。この中で著者の Lawrence博士は、新ダーウィンの定義を提唱しています。マインドのリーダーシップについて触れ、マインドフルネスによってマインドをクリアに保つことは、リーダーが持つべき4つの要素を開発することが可能であると言うのです。それは、①安全性、②必要なものを確保すること、③他人と触れ合うこと、④そして意味を見出すこと。これらを統合すると、まさに意思決定のプロセスに必要不可欠な要素であると思います。




マインドフルリーダーシップ: 
効果的なリーダーシップを保つ新しい手法

瞑想がどのように作用するのかを理解するために、名誉なことに私はダライ・ラマと接点を持つことができ、さらにチベット仏教のマスターと関係をつくることができました。彼らは共に、西洋に瞑想を広げたいと考えていました。それは宗教的な理由などではなく、より平和な世界をつくり、人々の人生を豊かにするためです。

私は、チューリッヒで行われた会議で ダライ・ラマと共に瞑想を行う中で、私たちは瞑想とリーダーシップを組み合わせて「マインドフルリーダーシップ」を開発することが可能であると感じました。

”マインドフルリーダーシップは、西洋のリーダーシップ論と数千年前に開発されたマインドに関する知恵を統合させることで、リーダーのセルフアウェアネスを高めることを目的としています。”

マインドフルリーダーシップは、効果的なリーダーシップを発揮することが可能となる非宗教的・現実的な試みです。「今ここ」に意識を向けることを助け、自分が及ぼす他人への影響を知り、組織が目指すゴールを達成するために成し得ることに集中することができます。マインドフルリーダーシップは、西洋のリーダーシップ論と数千年前に開発されたマインドに関する知恵を統合させることで、リーダーのセルフアウェアネスを高めることを目的としています。

私は、仲間とともに 2010年の8月にミネアポリスにて、このマインドフルリーダーシップに関するカンファレンスを開催しました。ここには400名の人々が集いました。仏教とリーダーシップの教授たちが初めて同じ場所で新しいリーダーシップのあり方を模索する活動が開始されたのです。



セルフアウェアネスを高め、自分を大切にすること

リーダーとしてのセルフアウェアネス高めるためには、私たちは自分の人生のストーリーを深く理解する必要があります。特に、試練や苦しい経験をした際のストーリーは、現在の行動や態度、そしてモチベーションに大きく影響しています。この手の内容を振り返る経験をしていないリーダーは、過去の苦しい経験がデリケートな問題となって外部からの賞賛、権力やお金、名誉などで補てんされる必要が出てきてしまうのです。加えて、自分の弱さを認めることができずに他人の前ではパーフェクトにふるまう必要があると考え、過ちを認めない傾向があります。

セルフアウェアネスを高める過程において、リーダーたちは自分の弱さ、失敗、繊細さを受け入れ、それと同時に強さや成功を心から認めることができるようになります。この作業を通じて、自分自身を大切にすることを学び、そして信頼を得られる方法で周囲に働きかける方法を身に着けます。その結果、人々に対して好印象を与えなければならないというプレッシャーから解放されるのです。自分自身が何者なのかをより深く理解することで、過去の痛みを伴う経験を成長に発展するポジティブなものとして解釈することができるようになります。

一方、EQの低いリーダーは自分を大切にできません。当然ですが、自分自身に対する思いやりを持てないと、他人に対してそれを向けることはできないのです。こういったリーダーは自分の近くにいる人々は大切にすることができますが、自分とは異なる価値観を持つ人々に対してはどこかに軽蔑、拒否、そして敵意を感じています。そして、自分よりも力のない者をコントロールしがちであり、中長期的に良い関係を築くことが不得手です。

さらに、セルフアウェアネスの低いリーダーはいざという時の自己管理もうまくいきません。通常の状態では自己管理や自制ができていますが、ひとたびプレッシャーにさらされたり、弱みを握られたりした際には、感情的な爆発や権力やコントロールの乱用を招きます。また、一方では行動できない、逃げるなど最もリーダーシップを発揮せねばならない時に正反対の行動が起こります。

”正真正銘のリーダは、いかなる時においても組織が迷走することや共通の価値観や目的を失うことは避けることができます”

セルフアウェアネスがあり、自分を大切にできるリーダーはより高いプレッシャーやストレスにも強い人々です。難しい状況の中でも、組織のモチベーションを維持することが出来ます。正真正銘のリーダは、いかなる時においても組織が迷走することや、共通の価値観や目的が失われることは避けることができます。この一貫性が組織に存在することでこそ、高い目標を達成し、複雑な問題を解決することができるのです。

セルフアウェアネスを持つためには、マインドフルネス瞑想がもたらす 単純な内省や振り返りを超えたものが必要です。真なるセルフアウェアネス、つまりマインドフルリーダーシップは、他人との対話を通じて開発されるものでもあります。瞑想と対話の両方を経験することで、私は自分自身のリーダーシップを大きく発展させることが可能となりました。

私は、この対話ができる人々に囲まれていてとても幸運だと思います。私の例をお話しすると、週に一度 人生における深く基本的な問いと共に、今直面している課題について議論しました。この対話は、私がHoneywell を退社し、Medtronic に加わる1989年、そして妻の乳癌が発覚した1996年に大きな力をもらいました。もう一つは、月に一度、ペアで対話をするために行われていたセッションでした。

これらの対話の場は、個人的で深いテーマを扱う上で安心で安全な場を提供してくれます。人生における個人的な経験を、組織における日々の活動につなげてくれる大変興味深い場となりました。参加していた方々からの、忌憚のない、しかし思いやりに満ちたフィードバックが私に大きな影響を与えました。



最後に・・・

マインドフルリーダーシップは、新しい考え方です。仏教で培われた東洋の手法を日常の中で活用することでセルフアウェアネスを高め、自分を大切にする感覚を醸成してくれます。高いレベルの穏やかさ、明瞭さ、そして気持ちのよさをリーダーにもたらします。

マインドフルリーダーシップは、新しい時代のリーダーのあり方を教えてくれているように思います。調和のとれた、永続できる組織をつくること、そして何より世界に平和と調和をもたらすものであると私は信じています。


※ ダライラマが マインドについて語った記事はこちら
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訳: 小島美佳