2016年2月29日月曜日

<体験レポート>ブッククラブ「組織にマインドフルネスを導入する」第2回に参加して

マインドフルネスに関するセミナーへ参加して内容、感想をシェアする体験レポート、
今回はブッククラブ「組織にマインドフルネスを導入する」2です。



 28日(月)夜、バランストグロースオフィスにて、ブッククラブ「組織にマインドフルネスを導入する」の2が開催されました。この会では、現在「Mindfulness in Organizations : Foundations , Research , and  Application(組織におけるマインドフルネス:理論の基礎、研究、組織への適用)」という本の内容のシェア、講師と参加者で本の内容についてのディスカッション、そして瞑想の体験などをしています。講師は小島美佳さんと松村憲さんで、お2人が各回交代で各章の内容を紹介されています。今回は、私の他に、ビジネススクール勤務の方、非営利法人勤務の方など男性4名が参加されていました。

<はじめに>
最初にアイスブレイクとして、名前の後に今日の体調、そして今日1日の中でどのような感情が生じていたか、どのような思考が多くを占めていたか、またこの終了後どんな気持ちで帰りたいかについて1人ずつ話しました。話をする前に自分で少し考える時間があります。考えてみると、1日の中でも案外いろんな気分になっているものだな、という発見がありました。参加されている皆さんのお話を聞くのも面白かったです。皆さんのお話を聞いていると、1日の中でいろんな人と会って、いろんなことが起こって感情が動いているのだというのが分かりました。また、1日何が起こって何を感じたか、という内容をシェアするだけでその人のことが分かった気持ちになり、一気に参加者の皆さんと距離が縮まったような気がしたのも興味深かったです。

<ボディスキャンの体験>
その後、本の内容のシェアに入る前にマインドフルネスの状態を少し体験してみるということで、数分間ボディスキャンという瞑想を行いました。私は日常的に瞑想を行う習慣を持っていないため、久しぶりの瞑想となりました。ボディスキャンは、まず自分の呼吸に意識を向け、その後、身体の部位に順番に意識を向けて感じてみるというものです。会場に来て読書会が始まってから15分も経っていないうちに瞑想が始まりましたが、小島さんの誘導瞑想でスムーズに身体の部位に意識を向けることができました。腕や足、足の裏などに意識を向けてみると、意識して感じる部分は感覚が鋭くなるためか、足の裏に意識を向けたときはいきなり血流が上がった感じがして、足の裏が異様にくすぐったく感じたので少し困りました。

<自分のアイデンティティについて考えてみる>
 その後、今回シェアする内容のテーマであるアイデンティティについて自分なりに考えてみるために、「あなたは誰ですか?どのような人でしょう?自分のアイデンティティについて書いてみましょう」という問いがあり、それについてまず自分で考え、その後他の人とシェアするということをしました。

<マインドフルネスとアイデンティティと仕事>
その後、いよいよ本の内容に入っていきました。今回は「Mindfulness in Organizations : Foundations , Research , and  Application」の第6章「Mindfulness, Identity and work : mindfulness training creates more flexible sense of self(マインドフルネスとアイデンティティと仕事:マインドフルネストレーニングが自己に対する柔軟性をつくり出す)」の内容のシェアでした。

マインドフルネスな状態になるためのエクササイズを行うことは、リラックス効果を高めるだけでなく生産性を上げるなど様々な効果があることが研究で分かってきていますが、第6章で紹介されているのは、「マインドフルネスのトレーニングはアイデンティティの変容にも影響を与える」というものです。近年、ビジネスシーンでも社員のアイデンティティに働きかける研修が行われています。第6章には、マインドフルネスがアイデンティティにどのように働きかけるのかを研究したケースが書かれています。

<研究の内容>
研究において、被験者は、「Mindfulness Based Stress ReductionMBSR)マインドフルネスに基づくストレス軽減法」と呼ばれるマインドフルネスのトレーニングを受けました。研究者は、トレーニング前後で被験者にインタビューを行い、考え方にどのような違いが生まれたか調べました。

まず、この研究の前提に、アイデンティティを3つに分けて定義する考え方があります。考え方の元となるのは、ヘイズの考案した「関係フレーム理論」です。関係フレーム理論では、人間には以下の3つの自己理解があるとされます。

Self-As-Story : Conceptualized self 物語としての自己
―「私たちは誰かという」説明(公私含む)、自分のラベル、記憶、プラン、経験、説明。今ここではなく、過去の経験、過去の経験の結果としての特徴など。一貫性、正確性を持ち、安定している必要がある(物語としての自己に矛盾があるとつらい)。これまでの経験や社会的規範によりかなり固定化していることも多い。

Self-As-Process : The experiencing self プロセスとしての自己(経験する自己)
―持続する、より柔軟な今この瞬間の言語による自己理解。自分が今この瞬間に体験していることの説明。マインドフルネスでいう今ここに生じる思考、フィーリング、感覚、イメージのダイナミズムを指す。自分に生じていることをモニターできることは、自己統御できていることの好例である。

Self-As-Perspective : The transcendent self パースペクティブとしての自己 超越した自己
―体験の観察者としての第三の自己。変わらない視点(5歳の時点でも45歳の時点でもSelf-As-Perspectiveは同じ)起きていることに対して感情や感覚で反応するのではなく、純粋に事象として観察する視点。究極の客観的な自己。

研究では、以下の仮説を基に進められました。
マインドフルネストレーニングは、
・物語としての自己、特に厳格で規範的な自己を減少させる
・プロセスとしての自己からの体験的な発言が増える
・超越した自己の視点からの発言も増え、精神的な経験を含めた自己を観察するようになる

これらの仮説を検証するために、3つの自己理解を以下の5つのコードに分けました。
SRS  Self-As-Story rigid self 物語としての固定的な自己 
  規範的な自己、「●●であるべき」「●●であらなければならない」などの考えに基づいて
  構成される自己
SFS   Self-As-Story flexible self 物語としての柔軟な自己
    規範的ではなく、「●●でなくてもよい」「私は変化する存在である」などの考えに基づく
  柔軟性のある自己
SP    Self-As-Process プロセスとしての自己
    今ここで物事を体験する自己、経験に基づくのではなくそのときの感覚に基づき今ここを
  体験する自己
SX1  Self-As-Perspective 視点としての自己1 
    その時起こった出来事から自分自身を切り離せている自己。思考や感情が影響されない
    ニュートラルな状態で、出来事が作り出す感覚の中にマインドはいない状態
SX2  Self-As-Perspective 視点としての自己2
    自分のマインドが一つの「器」と認識できており、マインドの中で起こっていた思考や
    感情など、あらゆる傾向のすべてを客観的に分析できている状態。SX1よりも
    さらに客観的で、出来事はすでにあらゆる事象の一つとして認識できている状態

この5つのコードを用いて、マインドフルネストレーニングの前後のインタビューで被験者が自身のことをどのように感じているか話の内容を分類し、どのような変化が見られたか検証しました。

その結果、53歳女性のインタビューでは、
MBSR前には「ミスに関して単なる失敗ではなく彼女のこれまでの人生で成してきたことに対する脅威であると感じている」(SRSがより多い)
と語ったのに対し、
MBSR後では「フィーリングや思考への新たな関わり方ができるようになり、ミスをすることよりも大きな、違ったアイデンティティを意識できた」(SFSSPSXが増える)
というような変化が見られました。 また、インタビューを行うこと自体が、被験者にとってアイデンティティを整理するのに有益であったということも述べられていました。

マインドフルネスのトレーニングにより、自分への考え方、つまり自分のアイデンティティの捉え方にも変化を起こすことが可能であるということが示唆される内容でした。研究は、
・組織の文脈では、トレーニングによって視点としての自己を獲得することで、よりポジティブでサポ―ティブな関係性へと導くことが期待できる
・インタビュー自体が被験者にとって有益だったのが驚きだった。自己について話すこと、また
自己の3つの形態について学び、自己を語る概念を新たに持つことはそれだけでコーチングの介入になる。私たちの方法はスタッフを選ぶ際や、人材開発において、アイデンティティのより深い量的な要素を計れるかもしれない。
とまとめられています。

  これらの内容を、都度質疑応答(例えば「視点としての自己の5歳と45歳で一緒というのはどういうこと?」や「経験する自己と視点としての自己の違いは?」など)や話し合いをして、理解していきました。

<ディスカッション>
内容のシェアの後のディスカッションでは、
・検証を十分に行うためには被験者が少ないのでは?(被験者は2名)
MBSRを組織で行うにはかなりの労力がかかる(8週間毎日1時間の瞑想を行うなどが必要)。どれぐらいのボリュームのマインドフルネストレーニングを行えば、変化を起こすだけの効果が見込めるのか?
90年代からEQEmotional Intelligence Quotientの略で「心の知能指数」と訳される)という概念はあったが、そのときと今の状況はどう違うのか?→当時は生産性を高めるという目的でアイデンティティへのアプローチを行っていたが、近年はより包括的な自分のあり方や視点を変えるためにアイデンティティへのアプローチが行われる。
などの話が出ました。
私は、そもそもなぜビジネスシーンにおいてアイデンティティへ働きかけることが重視されているのか少し疑問に思い、質問してみました。聞いてみて分かったこととしては、近年のビジネスシーンにおいては、固定的な視点ではなくいろいろな視点からものごとを見て考えることが求められていること、また、変化に対応し変化を受け入れるためには、自分のアイデンティティの把握(しかもできれば肯定的な自己把握)が必要、ということでした。

<再び誘導瞑想>
ディスカッションの後、マインドフルネストレーニングを少し体験するために、再び誘導瞑想が行われました。今回の誘導瞑想は、「宇宙まで意識を拡張し、そこから今の自分の姿を見てみる」というものです。小島さんの誘導瞑想で、自分の身体から今いる部屋、そして東京、そして日本、地球、宇宙…とどんどん意識が広がっていくイメージをします。そして、宇宙まで意識が拡張されたイメージができたら、そこから今の自分を見て感じてみるのです。瞑想の後に感想をシェアした際、「宇宙まで意識を持っていけなかった」という方もいました。この瞑想は、「宇宙まで意識を広げられなければ失敗」というものではなく、あくまでいつもの自分と視点を変えてみる体験を行うということです。なので、瞑想での到達点は人それぞれでいいのだと思います。

<おわりに>
その後も、マインドフルネスな感覚を取り入れた会社はどのようなものになっていくのか?マインドフルネスと利益追求はどのように両立するのか?というような話し合いが行われたりと、マインドフルネスとビジネスについて理解を深めることのできた有意義な時間となりました。

マインドフルネストレーニングが具体的にどのような影響を及ぼすかに関しては、今後も研究によってますます分かることが多くなりそうです。海外の最新事例が載っている「Mindfulness in Organizations : Foundations , Research , and  Application」は日本語版がまだ出版されていないため、内容をこのようにシェアしてもらえる場があるのはとてもいいなと思いました。また、マインドフルネスに関心がある人たち同士、疑問や感想を出し合ってディスカッションできるという点でも貴重な場だと感じました。

次回のブッククラブは311日(金)に開催されます。次回は「Mindfulness in Organizations : Foundations , Research , and  Application」の第7章「Improving decision making through mindfulness(マインドフルネスを通して意思決定を向上させる)」をカバーする予定です。ご興味のある方はぜひ参加してみてください。詳細はこちら


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