2015年10月24日土曜日

仕事での気分の落ち込みから立ち直る方法

 ※ この記事は、WEBメディア“Mindful”内の記事“How to Rebound From Difficult Emotions at Work”を和訳したものです。ご自身の瞑想やマインドフルネス活動の参考にしてください。



この記事では、職場で味わう落胆や失望感からいかによりよいかたちで気持ちを切り替えるかを紹介します。

私たちは皆、仕事での憂鬱感を味わったことがあるでしょう。例えば、昇進できなかった、顧客あるいは同僚との口論、社内政治で殺伐とした職場、職場のリーダーが、事実かどうかは別にして、同僚の不満の発生源はあなただと考える、などなど。悲嘆(grief)の原因に関わらず、これらの私たちの気をそらせるできごとは、あらゆるレベルで私たちの仕事のパフォーマンスに影響を与えます。あなたは、あなたのチームメンバーが感情的なわだかまりを克服するようどのように手助けすることができますか?

私は、高いパフォーマンスを上げるリーダーシップについて研究している国際経営開発研究所の教授であるGeorge Kohlrieser氏とこのことについて話をしました。議論の中で、彼は困難な感情から立ち直るいくつかの方法を提示しました。
「仕事において仲間意識は重要です。そして覚えておいてほしいのが、仲間意識を持つために必ずしも相手のことを好きになる必要はなく、ただ共通のゴールが必要なだけであるということです。しかし、人間関係にフラストレーションや失望感があるときには、分離や亀裂が生じるでしょう。それらの軋轢が起こったときには、その関係から部分的に、あるいは全面的に外れてみてください。この作業はあなたが悲嘆のプロセスに心を開くことを可能にします。

リーダー達にとっては、彼ら自身、また他の人たちの悲嘆のプロセスがどのように進行するのかを理解することが役に立つでしょう。人々はあらゆることで落胆しうるのです:査定でネガティブなことを言われた、契約がうまくいかなかった、人事異動、転勤などなど。私たちは皆、立ち直る前にこれらの感情を処理していく必要があります。

行動経済学では、ノーベル経済学賞受賞者によって以下のことが実証されています。多くの人々にとって、実は利益よりも損失の方がより強力にやる気を起こさせるということです。素早く何か困難を乗り越えたいときには、後悔や喪失感、フラストレーションにフォーカスするのではなく、関係を修復したあと、あるいは立ち直ったあとにどのようなことが起こるかを考えるために心の目を用いるようにしてください。

高いパフォーマンスを上げるリーダーシップのための秘訣は、チーム内に結びつきと団結力が強い状態を作るために、自らが困難なことから素早く立ち直り、そして周囲の人間が困難から素早く立ち直ることができるよう手助けをすることです。困難から望ましい状態に再び到達するために悲嘆について理解することは極めて重要ですが、リーダー達は悲嘆に十分な注意を払っているとは言えません。組織は失望感やフラストレーション、そして嫉妬を拒絶するからです。

悲嘆は一連の段階で進行します。順序は必ずしもこの通りというわけではありませんが、否定から、抗議そして怒り、悲しみそして喪失感、そして恐れへと向かう流れがあります。これらは悲嘆の感情的な部分です。あなたが、人々が怒り、動揺し、落ち込み、あるいは恐怖で満たされているのに気づいたとき、彼らは悲嘆の段階のどこかにいるのです。それは何でしょう?もしかしたら悲嘆の元は、ハラスメントのように非常に深刻なものとして誇張された、実はささいなできごとかもしれません。その後、受容の段階を経て、さらに合理化や新しい関係性の構築を経て、最終的に許しと感謝の気持ちへと移行します。

許しは、私たちが優れたリーダーシップの資質の一つとしてあまり頻繁に話すことのない要素ですが、それは困難を乗り越えるときの別の方法なのです。よくリーダーがこう言います、「あなたの考えていることを話してください」。でももしあなたが本当のことを言ったら、彼は絶対にあなたのことを許さないでしょう。彼はあなたを責めるかもしれません。あるいは別の可能性として、彼はあなたの犯したミスという困難を乗り越えることができず、職場に復帰できないかもしれません。

感情的知性には共感性が含まれます。でも私たちは、自身の悲嘆のプロセスを経なければ、共感性を得ることはできないのです。思いやりの気持ちを持つ能力は、しばしば見過ごされるものです。どのような類のものであれ、あなたが抱えている心の痛みのプロセスをしっかり見届けてから次へ進んでください。」
<おわり>


2015年10月10日土曜日

忍耐の限界がきたとき、あなたがすべきこと

 ※ この記事は、WEBメディア“Mindful”内の記事“What to Do When You’re Running Out of Patience”を和訳したものです。ご自身の瞑想やマインドフルネス活動の参考にしてください。


14世紀に「農夫ピアズの夢」(ウィリアム・ラングランドの長編寓話詩)が発行されてから今に至るまで、私たちは幼少期から「忍耐は美徳である」と刷り込まれてきました。忍耐に関して衝撃的なのは、私たちにとって改めて忍耐の重要性について説明される必要が全くないほど、忍耐が美徳であるということが当たり前になっているということです。特に現代の西洋社会においては、生活において忍耐が大きな割合を占めることを私たちは確信せざるを得ません。

ただ、忍耐はそうあると望ましいとされるポジティブな性質の中で、多少は周囲からの評判をよくする性質ではありますが、消費主義と金融主義が出会った西洋社会で「成功する」には必須の条件ではありません。忍耐は素晴らしいものですが、それよりもホームランをかっとばし、契約を結び、ポイントを取れるような、他の性質の方が好まれます。ライバルを出し抜き、世間に遅れを取らないよう尻を叩かれるこのご時世において、忍耐は他に遅れを取ることであり、最悪の場合死さえも意味するのです。忍耐はあからさまなものではありません。また、人を前面に押し出すものでもありません。(世界的な有名なコーチングの第一人者である)アンソニー・ロビンス氏のような人の視点から見ると、一言で言うと忍耐は「弱く」感じられるのです。

ウェブスター社の辞書では、忍耐を「長時間待っているとき、あるいは問題や難しい人々に対処するときに落ち着いて、イライラせずにいられること」と定義しています。この定義には、忍耐に関する十分なニュアンスが含まれていません。「落ち着いて」は素晴らしいことですが(私はアップルストアに新製品を求めて殺到する人たちにこの言葉を叫んでいた誰かさんのことを思い浮かべています)、「問題」や「難しい人々」に直面したときに「イライラせずにいる」にはどのような内的感覚でいるのか、そしてどのようにそれを行うのかについては説明が十分とは言えません。

マインドフルネスのスキルを高めるということは、いかに忍耐心を育むかということなのです。私自身の実践と、また臨床医としての経験から言えるのは、忍耐心を構築するためには3つのマインドフルの要素があるということです。
1.今ここで実際に起こっていることを受容する心を育む
2.すべては変化するという厳然たる事実をはっきりさせる
3.自分は分離している、自分だけ離れ小島にいるというような観念にはまり込まない

忍耐心は派手ではありませんが、幸せでいるためには非常に重要です。そして、ダライ・ラマのような聖人だけができることというわけでもないのです。忍耐は現代の心理学と脳科学がサポートできるものであり、あなたが次のものごとを待っている間にできるものです。

私たちが家や他の場所で人に不満や怒りを爆発させたり、愛する人を心の中から締め出したりするのは、私たちが、マインドフルネスの実践が教える3つの要素とかい離していることにより起こります。焦りは私たちの最良の、そして愛に満ちた意図を失わせます。これは自分の身近な人といるときに特にそうなるようです。

ここで、忍耐を消極的な視点でとらえるのをやめ、あなたの日常生活に積極的に組み込んでいく重要なスキルとして活用するための提案をします。


あなたの「忍耐筋」を鍛えるために、以下のワークをやってみてください。

1.以下のように自分自身へ問いかけてください:
あなたは他の人へ怒りを感じていていい気分ですか?他の人への怒りは、ものごとをよりやりやすく、管理しやすくしていますか?怒りは思考を促進していますか、それとも遮断していますか?あなたはどのように怒りを悪化させ、自分と他人へネガティブな影響を及ぼしていますか?あなたが怒り、焦ることで何が犠牲となっていますか?

2.あるいはこのように自分自身へ問いかけてください:
あなたはどのようにしてこの「罪人」から学びますか?意図していないにせよ、どのようにして彼らはあなたに忍耐の境界線とエッジについて教えていますか?あなたは、彼らがあなたに与えた痛みを好きになる必要はありません。でも、さらなる幸せのために、あなたの忍耐力とキャパシティを広げる可能性があるこの機会を得たことを喜んでみませんか?

3.他者に反応したくなる衝動を切り抜けるための目標を設定してください。あなた自身が忍耐を実践することに責任を持ってください。

4.奥の手を使う:
あなたが疲れていてエネルギーが枯渇しているときには、戦いへの衝動に対抗する必要のあるところに身を置かないよう心がけてください。忍耐心が無くなっていると感じたとき(例えば、小さな子どものいる家庭の就寝前など)には、そのときのルーティンをこなすことだけを考えましょう。

<おわり>


2015年10月3日土曜日

ブッダの教えとマインドフルネス④ 「自然の法則」の観察

 前回までにマインドフルネスを高めるために、「身体」「感覚」「心」を観察することについて書きました。今回のテーマはブッダが気づきを高めるために教えた四つのポイントとしては最後にあたる、「自然の法則」についてです。
 マインドフルネスが高まり、今ここにいることができるようになってくると、心そのものの動きがよく見えるようになってきます。PCのメモリが増量されたようなもので、自分の心が日々の刺激の中でどのように動いているか、ということに意識が高くなります。呼吸を観察したり、身体を観察することでその日のコンディションにも気づくようになるし、感覚が研ぎすまされてくるので食事をより深く味わったり、心地よい体験をより深く受け取ることも可能になってきます。前回のテーマであった心の観察としては、自分の心がどのように反応するのか、どんな思考のパターンがあるのか、どんな感情が生じてくるのかにも気づけるようになります。気づきが高まれば、緊張を緩めるように深呼吸をしたり、自分を責める無意味な観念は手放そうと決めたりすることもできるでしょう。。



 さて、私たちの心も身体も、それが従っているのには自然の法則があると考えることができます。仏教では、ダンマとか法、ダルマなどと呼ばれてきたものです。
 私なりにこの二つの言葉の意味を解釈すると、二つの大事な視点があります。それは、「無常」と「縁」です。日本人や日本文化において、無常というのは古来より通底しているテーマみたいなものですが、これがマインドフルネスにおいても根幹の考え方となります。
 「無常」とは、四季折々が変化しているように、この世の、世界の実相は全て変化しているというリアリティにあるということです。この身体もマインドフルネスで観察してきたように変化しています。血液は1週間で入れかわり、骨すら7年で新しくなるといいます。心の面では、私たちがしがみつくエゴ(自我)がありますが、実態のないエゴに私たちがしがみついているとも言えるのです。変化を受け入れることでより大きな流れに委ねたり、新しくなったり、本来的な自己に繋がることになります。うつやメンタルの悩み、職場や家庭での人間関係の悩みなど、これまで作ってきた私たち自身のエゴが試されているとも言えます。しがみつくほどに、苦しさは増し、自然の法則はその自分を手放しなさいと教えてくれているのかもしれません。
 マインドフルネス瞑想においては、身体が変化していることを自覚したり、感覚を捉えてその変化を見届けたり、心を捉えて思考や感情が消えていくのを目覚めて確認することが大切です。その都度、「変化している」というリアルを実感することが大切です。こうしたあたり前のような変化を、何度も自覚し、見抜くことで自然の法則がやがては自分の前に現れてきます。変化をより実感できるようになると、葛藤も少なくなってくるでしょうし、「苦しみ」というのも明らかになってくるでしょうし、仏教的な意味での「智恵」が自然と湧きあがってくるといいます。

 もう一つの自然の法則は、「縁」ということになります。無常を受け入れ始めると、全てが繋がりの中にしか生じ得ないということが体感として自覚されてきます。母親、両親、先祖といった人々との繋がりがなければ誰一人として生きていられるわけはありません。今ここでも、何らかの形で誰かに、何かに、国に、空気や水に、自然に・・・あらゆるものの繋がりの中に自分の命が生起しているというのが仏教的なリアリティです。「縁」を実感する程に、自分という存在に必要以上にしがみつく必要もなくなれば、智恵が湧き、慈悲の心が自然と湧いてくるでしょう。私たちが個人としても、全体としても自然の法則に沿っていく形に成長すると、コミュニティが再生するのではないかと思っています。