2015年9月25日金曜日

映画「インサイドヘッド」が教えてくれる、感情に関する5つのこと(後半)

 ※ この記事は、WEBメディア“Mindful”内の記事Five Things Pixar’s “Inside Out” Teaches Us About Emotionsの後半を和訳したものです。(前半はこちら)ご自身の瞑想やマインドフルネス活動の参考にしてください。




3.私たちの現実と記憶は感情というフィルターにかけられている
私たちが今起こっている現実を過去の経験という枠組みを通して見るように、私たちが振り返る記憶は、私たちの今の経験によって彩色されています。
ライリーのケースだと、彼女は映画の中で数回、自分たちのチームがチャンピオンとなったホッケーの試合のことを思い出します。ある時点で、彼女は自分の打ったウィニングショットを懐かしみ、試合について悲しい気持ちで思い出します。別の時点でも、彼女は全く同じ瞬間のことを思い出します。でもそのときには、どれだけ彼女がチームに貢献したかを示すために、彼女を肩に担ぎあげたチームメイトに賞賛されながら笑っているところを思い出します。

同じ記憶が、悲しみのレンズを通すか喜びのレンズを通すかで全く違ったものになるのです。これはとてもパワフルな考え方です。私たちが本当に覚えておかなければならないことは、私たちの記憶は私たちの個人的な物語の一部なのであり、私たちは記憶を、いくつものやり方で自分の信じる物語として構築するということです。自分自身で物語を作り上げているのだから、いつでも自分でその物語を変えることができるのです。

記憶から、ネガティブな事実や困難なできごとを含む特定の部分だけを削除することはできません。記憶は常にそこにあります。それでいいのです。研究は、私たちが実際にした体験よりも、私たちがそれらの体験について、どのような物語にして自分自身に語るかということの方が、さらにインパクトがあることを示唆しています。

4.感情について語るための言葉を持つことは力になる
この映画でもっとも出色すべき点は、これが感情にフォーカスする映画として存在しているところかもしれません。科学的な整合性がある程度以上存在していることよりも大切なことは、この映画の提示する感情の概念が、私たちが自分の子どもと行う対話に影響を与えるだろうということです。

もし子どもたちが、早い段階で自分の感情を感じる方法を、そして全ての感情を感じることがとても重要だということを学ぶことができれば、私たちはよりうまく適応できている思春期の子どもや成人を見ることができるかもしれません。

実際、アニメーションであることはさておき、この映画のターゲットとなる観客は全ての人類です。何故って?さまざまな経験を通し自分の中に起こった感情に対して語る言葉を持つということは、経験から学ぶ力を与えることであり、最大限の思いやりを持ってそれらの感情に反応し、より少ないジャッジメントでそれらの感情にアプローチすることだからです。

5.自分の感情を感じることは普遍的な人間の営みである
ピクサー社は、ポール・エックマン博士の研究から生まれた、科学的に分類された5つの普遍的な感情がそれぞれ用いられたときに何が起こるかをよく知っています(6つ目の普遍的な感情は驚きです)。

エックマン博士は研究を通し、特定の感情は文化を越え世界中で共通の顔の表情により表現されることを示しました。そして、この映画は私たちの実際の違いを越えて、私たちがいかに本質的に人間として似通っているかを思い出させてくれます。これは非常に強力な考え方です。特に肌の色やジェンダー(社会的性差)、性のアイデンティティにから起こる差別を考えるときに有用です。

1日の終わりに、あなたが誰であるかに関わらず、あなたたちは同じ感情の幅とキャパシティを持ってその日のできごとを経験します。つまり、私たちが皆ただ自分自身のハードな人生を戦っているだけということに気づくことができたら、私たちはこの世界を今よりもっと多くの慈悲心と、より少ないジャッジメントを持って経験することができるかもしれません。


筆者:Jennifer Wolkin
ニューヨークを拠点とする臨床健康と神経心理学者。教授であると同時に、執筆や講演活動を行う。近年BrainCurves(ブレインカーブス)を設立し、女性の心身と脳の健康のための正確でアクセスしやすいアイディアを提供する活動を行っている。

<おわり>


2015年9月18日金曜日

映画「インサイドヘッド」が教えてくれる、感情に関する5つのこと(前半)


※ この記事は、WEBメディア“Mindful”内の記事Five Things Pixar’s “Inside Out” Teaches Us About Emotionsの前半を和訳したものです。ご自身の瞑想やマインドフルネス活動の参考にしてください。




このアニメーションは、全ての人(老若男女)に対し、感情の複雑な動きについて説明するのに非常に適しています。

「インサイドヘッド(原題Inside Out)」は、ライリーという名前の、家族で遠方に引っ越しをしたばかりの11歳の少女の生活を中心に描かれます。非常に感じやすい年齢の子どもにおいて、引っ越しは大きな変化です。彼女は、引っ越す前の彼女の家、友達、ホッケーチームに対する強い感情のゆらぎを経験します。
物語のメインキャラクターは、ライリーの感情であるヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカです。彼らはライリーがこの人生を変える経験を歩んでいく過程で、彼女の心の働きを見せる役目をしています。

この物語が始まった瞬間から、私は自分の興奮を抑えることができませんでした。私の中のアニメオタク的な視点は吹き飛ばされました。映画の発するいくつものメッセージが神経科学の観点から見ても現実に即したものだったからです。例えば、その日に体験したことの短期的な記憶は、睡眠中に記憶に統合するところなどです。この映画は、ストーリーテリングのためにいくつかの科学的な整合性を諦めてはいます。でも、映画の詩的な側面が、私たちは本質的に生活の様々なポイントで現れる様々な性格特徴によって成り立っているという現実から乖離することもありませんでした。

「インサイドヘッド」が心の入り組んだ仕組みを越えてとてもうまくやってのけたことがあります。それは、私たちはどうすれば人生を前に進められるようなやり方で自分の感情と記憶を理解し、接続し、受け入れることができるかというメッセージを力強く伝えることです。

この映画は、感情の重要性について5つの側面から教えてくれています。

1.すべての感情は目的があって存在している
感情は本質的にはいいものでもわるいものでもありません。そのような二元論で感情について考えることは、あなたに害をもたらすでしょう。すべての感情は、私たちの外側の経験を通して得た私たちの内なる経験について、何かを伝えるものです。

ルミというスーフィーの昔の詩人は、「ゲストハウス」という詩の中で、我々はいかに全ての感情を、それらのメッセージや目的を理解しようとするのではなく、それらのいずれかを取り除くこともなく、全てをただ自分の中に訪れたものとして扱うべきかを主張しています。

ルミが詩の中で言及したことは、近年の研究でも確認されています。それは、幸福は実際には幅広い感情を持つことによってこそ成り立つということです。あなたがすべての感情をよりしっかりと感じるほど、あなたはより幸せになるのです。

2.感情を持つことはコンパスを持つこと
物語の中で、ヨロコビは常にカナシミをライリーから遠ざけようとします。ライリーは様々な感情を感じているのですが、ライリーの母親が彼女に常にハッピーでいるよう要求していることもあり、悲しみを感じることができないでいます。結果、そのことが彼女を寒々しく麻痺した存在にしてしまっています。この状態は、貧しい判断と不健全な選択のみを作り出します。ライリーは、ものごとをよりクリアに見ることができ、サポートを受けるために自分から手を伸ばすことができるようになるまで悲しみを感じることができませんでした。感情を自覚し理解することは、それらを無視するよりもはるかに健康的で、生産的で、環境適応的な行動です。

後半に続く>


訳:北里史絵

2015年9月12日土曜日

「仕事とマインドフルネス 〜 経営者は、どう瞑想をビジネスに活かしているか 〜」第2回

マインドフルネスを取り入れているビジネスリーダー達は、どのように瞑想など日々の実践を行っているのでしょうか。また実践により起こった変化は?「いま、ここ。」の運営者である小島美佳がビジネスリーダーにインタビューします。

2回は、インターネット企業で執行役員をされているAさんにお話をお聞きしました。

瞑想を始めたきっかけと、最初に経験した瞑想

小島:はじめに、瞑想を始めたきっかけを教えてください。
A:知人に半分だまされて、23日の断食瞑想リトリートに参加したことがきっかけです。
小島:(笑)それ、いきなり連れて行かれたんですか?
A:いきなりではなく、一応「いいですよ」と勧められたのと、当時その知人とフリーランスで仕事を一緒にやっていて、組織開発をテーマにやっていく上ではこういうのも必要なんじゃないか、みたいな話になって。時期があんまり定かじゃないけど、たぶん6年ぐらい前じゃないかな。
小島:あの、セアロ[1]の?
A:そうです。セアロをメンターにしたリトリートで、山梨に身延山久遠寺っていう日蓮宗の総本山があるんですけど、そこの近くの宿坊でやったんですよ。
小島:わお(笑)すごい。そこではどんなことをやったって思いだせます?
A:セアロのリトリートっていつも同じなんですけど、基本そこで断食をします。あとは日に3回かな、だいたい昼、夜、次の朝、みたいな感じで講話があり、問答があるんですね。
小島:なるほど。
A:で、その後に瞑想をするっていう。そういうセッションのサイクルがあるという感じです。
小島:そのときにやった瞑想ってどういう瞑想ですか。
A:特に指導もなくて、単純に座って目をつぶって、音楽をかけますね。
小島:そうなんだ。
A:音楽をかけてあかりを消して、あとはずっと瞑想すると。
小島:へえ、面白い。何分ぐらい?
A:ええとね、あの音楽、たぶん4050分ぐらいあるんじゃないかな。結構長いと思う。
小島:長いですね。
A:まあそのときのセアロの意向次第っていうのもあって、ちょっとそのとき時間測ったりしてないのでわからないけど、でも30分ぐらいはしているんじゃないかな。
小島:なるほど。どうでした?
A:どっちかっていうと「腹減った」っていうのがそのときは先行していて。
小島:(笑)まあ、断食ですし。
A:ただ、断食とあわせてだったので、瞑想で、ということではないのかもしれないけれども、やっぱり最初の断食明けのお粥を食べたとき、味覚が鋭くなるなあ、というのは体感しましたね。
小島:なるほど。23日って、私の行ったことがあるのもそれぐらい。最近全く行ってないですけどね。
A:うん、近々1日のリトリートがあるみたい、断食ではなくて。だからそれは行こうかな、と思っているけどね、久しぶりに。
小島:ほんとですか。
A:うん。もう34年行ってないから、久しぶりに行ってみようと思っています。
1ガユーナ・セアロ師:ミャンマー上座部仏教の日本人僧侶。全国で心の平和を説くリトリートを行っている。

瞑想で続けていること

小島:そのリトリートに出たあと、何か試してみたこととか、瞑想的なもので実践していたことなどがあれば教えてください。
A:そうですね、セアロがかけた音楽のCDがあって、それを買って家で。家でというより、出張したときが多かったかな。出張先でリトリートのときのように部屋を暗くして音楽をかけて瞑想してみる、というようなことをしばらくしていましたね。で、その後小島さんの誘導瞑想、ああいうのもやってみて。あと、サイトで瞑想サイトがあって、Calm.comって知ってる?
小島:私はiPhoneのアプリでときどき使っていますけど、パソコンのサイトがあるのは知りませんでした。それって英語のですよね?
A:そう、英語。英語って言っても、単に「力を抜きなさい」とかそれぐらいの誘導。で、一応自然っぽい川の流れとか波の音とかが流れて、時間設定もできるという。あれがわりと便利。アプリだと、毎日どれぐらいやったかっていうのもわかるから。
小島:そうですね。
A:なので、一時期集中的にやっていましたね。最近これはさぼっているけど。
小島:私も電車の中でそれ、結構聞いたりしていました。
A:そうそう。でも基本的には出張先のホテルで、というのが僕は多いかな。
小島:Aさんの場合は出張が多いから、というのもあるんでしょうね。
A:まあ家でやるっていうとなかなか。瞑想していると、子どもが面白がって騒いだりして(笑)
小島:(笑)
A:あと子どもが怒られている声とかが聞こえてきたりもするから。あんまり瞑想に向いた環境じゃないんだよね、実は。
小島:(笑)それはそうですね。なるほど。
A:なので僕は、どっちかというと出先でやっています。それと、最近はもう移動のときに寝ているんだか瞑想しているんだかですけど、あまり本とかを無理に読まずに目をつぶって、ちょっと呼吸に意識を集中して。そういうことをするぐらいでも、それで結構瞑想にはなっているのかな、と。
小島:なるほど。
A:あとは、考えてみると僕はわりと1人で酒を飲みに行くんですけど、あれは結構瞑想だよね。
小島:うん、私もそう思う。
A:酒が入っているのがいいかどうかわからないけど、今考えるとそれが必要だからやっているような気がする。システム開発のプロジェクトがあるときでも、11時過ぎにわざわざ家に帰る途中のビール屋に寄ってぼーっとして。カウンターに座って、ぼーっとグラスを眺めるという感じの時間を過ごして。今考えるとそれは瞑想の一種かな、とも思いますね。
小島:そうですね。リラックスしていそうな感じもあるし、脳波を計ったらα波が出ているかも。
A:うん。お店の人と話したりとかそういうことは、僕は毛嫌いしていたので(笑)
小島:「話しかけるな」オーラを漂わせて。
A:「話しかけるな」オーラを満載にして。
小島:(笑)
A:でも、それでも居心地よくいられるところを何軒か見つけ、という感じかな。


1人で飲みに行ってぼんやりするのも
いい瞑想の時間になっているのでは、とA氏


お酒のリラックス効果

小島:いいですね。春に開催されたミンデル博士[2]のワークショップに行ったときに、踊ったりするワークがあって。
A:(笑)
小島:そのときに、誰かが「お酒を飲んでこういうことをやるのはどうですか」というような質問をしたんですよ。宗教の儀式でもお酒を飲んでお祭り的にやったりするというのは結構あるから、そういうことを試すことはどうなのかって聞いていて。でも、ミンデル博士はかなり健康志向な人なんですよね、たぶん。だから「僕はおすすめしない」って。「お酒抜きでできるんだったらお酒抜きでやりましょう」と言っていましたね。
A:(笑)まあ、それは人によりけりじゃないかな。お酒を飲んでも結局身体は休まらないから、と言われますけどね。
小島:へえ。
A:要は、頭が一瞬麻痺しているだけなんで、身体は休まらない。結局内臓は働かないといけないわけじゃないですか。
小島:ええ。
A:だから「本当の意味でのリラックスにはならないよ」って、この間健康診断のお医者さんに言われたんですけど。
小島:そうなんですね(笑)
A:うん、なかなか面白いですよね。だから「どっちかっていうと運動しなさい」って。運動して、あんまり考えない時間ができるじゃないですか。全力で走ったり、とか。
小島:はい。
A:そういうことで体を疲れさせた方が結局はリラックスにつながるよ、ということは言われましたね。
小島:確かに、それはそれで説得力があるかも。
A:そう、「なるほど」と思って、何か運動でもしようかっていうのは…思っているけどね、という。
小島:(笑)とはいえ、お酒でリラックスの時間がちゃんとあるというのは、それはそれで瞑想の一部だな、とは思います、私は。
A:うん。
2アーノルド・ミンデル博士:心理療法の1つであるプロセスワークの第一人者。近年組織開発にプロセスワークの手法が用いられることも増えている

続けていての変化

小島:瞑想を続けていて何か変化はありましたか?
A:うーん、正直よくわからないというか、逆に久しぶりに会った人とかに聞いてみた方がいいのかもしれない。
小島:確かに。
A:前の会社のころは結局心配性だったり短気だったりしたなあ、とは思う。で、今は、そんなに変わらない気もするけど、でも若干は改善されたんじゃないかなという気がしますね。前は「こうなったらどうしよう」というのを結構気にしながらやっていたと思うんだけど、最近は「出たとこ勝負でしかないね」「一応心配はするけどね」って、そのくらいになったかな。
小島:(笑)そこまで気にならない感じになってくるっていうことですかね。
A:何かあったときに「ああ、そうきたか」っていうのはあるかな。前は何かあったときに「うわ、何でこうなっちゃうんだろう」とか、「どうしようかな」とか思っていたところが、今は「どうしようかな」っていうのを考えはするけど、そんなに深刻にならない気はしますね。以前はスケジュールが遅れていた場合にそれをどうやってカバーするかというのをすごく考えたけど、でも、「なるようにしかならないよな」という、そこの感覚は若干出てきたかなと思いますね。
小島:何か、適度なアンニュイ感みたいな感じが勝手に私には伝わってきている感じがしますが(笑)
A:アンニュイ、そうね。そのぐらいじゃないとやっていられないというか、倒れちゃうんだよね、たぶん。いろんなことがあるから(笑)
小島:(笑)ほんと?
A:やっぱりいろんなことがあるんですよ、会社っていうのは。面白いなあ、と思うけど。
小島:(笑)
A:次から次へといろんなことが出てくるんで。まあただ、1人で解決しなくていいんでね。最後は「責任取れ」って言われたら「しょうがないや」って、そこでしかなくて。今ある中でどうしようか、というところを考えてもらう側の立場だから、今は。
小島:確かに。
A:だからいろいろある、「これやってね」って言ってもなかなかやってくれないとか。「これをちゃんと分析したレポートちょうだい」って言ってもなかなか出てこないとか、そういうのは日常茶飯事なので。そこにいちいち怒っていたら身体が持たないよね、というのはある。

「ほう、そうか」と「そうきたか」

小島:確かに。いつだったか、知り合いからあるお坊さんの話を聞いたんです。お坊さんのところにある日突然女性が来て、「これはあなたの子どもだから育ててください」、といきなり子どもを置いて行かれて、そうしたらそのお坊さんは「ほう、そうか」って言ってその子どもを育てた。で、しばらくしたらその女性と本当の旦那様らしき人がいきなりまた押しかけてきて、「自分の子どもを奪ってふざけるな」みたいな感じで詰め寄られて、で、お坊さんは、また「ほう、そうか」と言って子どもを返した、というような。その知り合いは「ほう、そうか」って言えるようになるのをちょっと目指したい、と言っていて、何となくそんな感じだな、とは思います。いちいち反応しないというか。
A:そうだね。確かに、「そうきたか」っていうのがね。
小島:(笑)
A:「ああ、そうきたか」っていう、その感覚を持っていると精神衛生上すごくいい。
小島:なるほど、ちょっと新鮮に思えるようになる、みたいな感じですね。
A:そう。あとは、解決するっていうのは大事なんだけど、放っておくっていうのも大事なんだよね。放っておくと勝手に解決するっていうことがあって、変に介入しない方がいいっていうこともあるから。そこはまだやっぱり介入したくなっちゃう自分がいますけどね。でも、「これどうなるのかな」なんて思っていると、意外なところから意外なことで結局解決、みたいなことがあったりするので。やっぱり時間が解決する、というのはわりと大事な感覚かな、と。
小島:放置力ですね。
A:うん。あと、しばらく会わないとか。
小島:(笑)なるほど。
A:意識的に離れるとか、メールが来ても答えないとか、そういうのってわりとよかったりするよね。
小島:ええ。
A:無理に「自分が解決しなきゃ」と思っちゃうと、かえって問題を複雑にするなあと。他の人に行ってもらうとかね。これは、何なんだろうね。
小島:どこかで全体観が把握できている、いい意味での突き放し力ですよね。あとはそれってやっぱり「早く解決しなきゃ」という不安感から解放されていないと、たぶんできないと思うんです。
A:まあ、どうなのかね。そこまで達観しているかどうかはわからないけどね(笑)偉そうに言っているけど。
小島:でも、例えば「早くやらなきゃ」っていう気持ちが自分に戻ってきたときに、「あ、戻ってきてる」というのがわかるようになったり、というのは絶対あると思うんですよ。
A:ああ、そうだね。だから「あ、焦ってるな」というのは感じられるかもしれない。ただ、やっぱり締切というものにわりと鈍感になった気はする。あえてあまり期日を約束しないというね。
小島:(笑)いいですね。
A:ただ案外不思議なもので、期日を約束しない方がわりと早く片付いたりするんだよね。そこは感覚としてある。「来週までにこれをやります」と言って「さてどうしよう」って考えるより、いつになるか特に何も言わずに置いておくと2日後ぐらいに猛然とやり始めるとか、そういうのあるな、と思って。
小島:へえ。自然のサイクルがうまく活用できるようになるのかな。でもそれは面白いなあ。無意識にだんだん「今、私ここがピークだから」ってコンディションのいいところに持ってこれてたりして。
A:うん。とにかく、期日のコミットを意識的にしないっていうのは結構いいよね。
小島:(笑)なるほど。それは世の中のビジネスマンにはかなりいい示唆になるのではないでしょうか。
A:いや、コンサルの人とか、やっぱりスケジュール引いていつまでにこれやって、というのは当然あると思うんだけど。でも、最終的なアウトプット、最終的に何ができるのがいいのかっていうのを考えると、個々のタスクの期日って実はそんなに重要じゃないですよね。でも、どうしてもそこに向いちゃうじゃない、タスクがあって期日があると。
小島:そうですね。
A:そうすると結局なんだっけ、ってなっちゃう。重要なポイントがよくわかんないままとりあえず資料作りました、的なものも出てきちゃいますよね。今、会社でコンサル的なことをお願いしている人もいるんだけど、そういう人の動き方とか見ると、やっぱりかなり細かいところを気にしているし、アウトプットを作ろうっていうところで相当みんな苦労しているんだなあ、というのがよくわかる。
小島:ああ。
A:そんなに作らなくていいんだけど、逆に僕の欲しいのはこれなんだけど、というのがあるんだよね。
小島:1つそういう型みたいなのができちゃうと、その呪縛からはなかなか解き放たれづらいんでしょうね。
A:そうそう。

移動中は仕事しない方がパフォーマンス向上につながる

小島:今どのくらいの頻度で瞑想しているかお聞きしたいのですが、出張のときと移動のとき、という感じでしょうか。
A:はい。今ほぼ毎週飛行機に乗っていて、出張先と往復という感じの生活なんですよ。だからそういう意味では週2回っていう感じなのかな。あと1人飲みも週1回ぐらいは必ずしているから(笑)
小島:結構定期的にできている感じですね。
A:うん、定期的にできているんじゃないかな。飛行機はもう、座って離陸する前ぐらいに…だからあれを瞑想と言うのか単なる睡眠と言うのかわからないけど。
小島:でも、リラックスの時間ということですよね。
A:そうそう。
小島:どうしても、そういう時間ってメールをチェックするとかいろんなことをやってしまいそうじゃないですか。
A:でも、飛行機は特にだけど、仕事はしない方がいいと思うね。
小島:ええ。
A:メールチェックぐらいはするけど、資料を作るとかそういう時間にするよりは、むしろもう思い切ってリラックスの時間に当てた方がいいと思う。移動中って身体には結構負荷がかかっているはずだから。
小島:そうですよね。
A:うん。だから、たぶん本当は移動中の仕事ってパフォーマンス的にもよくないんじゃないかな。やった気にはなるけど。
小島:(笑)確かに。一応コンセントもあるかもしれないけど、それは使わずゆっくりしましょう、という感じですね。
A:うん、「仕事してるぜ」感が感じられるし、新幹線の中だとそういう人も結構いっぱいいるのかもしれないけど。
小島:いるいる。
A:でも、どっちかっていうと、ゆっくり音楽でも聞いて、本でも読んで、という方が、結局はパフォーマンスが上がるんじゃないかなと思います。

これから瞑想を始める人へのアドバイス

小島:はい。では最後に、これから瞑想を始めようとしている人にアドバイスをお願いします。
A:あまり気張らずに適当にやるのがいいんじゃないかな、と思います。「さあ、瞑想するぞ!」っていう感じにしなくていいんじゃないかな、という。
小島:(笑)リラックスするためにやっているから、「リラックスするぞ!」って頑張るっていうのはちょっと違うと。
A:ねえ。本末転倒になっちゃうんで。通勤電車の中でも、ただ目をつぶって呼吸を意識するとか、聞こえないけど心臓の音を聞こうとするというぐらいで、かなりリラックスというか瞑想状態にはなるんじゃないかなあ、という気はしています。あとは、特に移動が多い人は移動時間がやっぱり。通勤時間もそうだし、出張とかは逆に絶好の瞑想タイム、というふうに思ってリラックスする時間に当てるというのが、仕事してる人にとってはいいんじゃないかなという気がしますね。
小島:なるほど。あと興味があったら断食瞑想に行ってみましょう、ですね。
A:(笑)ただ、瞑想のことも意識しているからかもしれないけれども、今だいぶそういう本が出始めてきているかな、という気がするよね。
小島:そうですね、増えてきたと思います。
A:11月に(アメリカの)バークリーでマインドフルネスのシンポジウムみたいなのが開催される予定で、そこには企業の人たちも結構出るみたいなんだけど、いかに社員の人にリラックスしてパフォーマンスを上げてもらうか、という面で、企業側にも瞑想というアプローチがだいぶ認知されてきているのかな、というふうに見えるよね。
小島:そうですね。注目されてきている気はする。
A:11月のは、ジェレミー・ハンターさん[3]が話をするみたい。
小島:そうですか、1回シドニーでやっているのを見たことがあります。
A:タイミング次第では、US出張のついでに行けるかもしれない、とは思っているんだけどね。
小島:あと、Mindfulness in Organizationsという本が出ましたね。まだきちんと読んでいないのですが、ビジネスの中で、それも組織の中でどうやってマインドフルネスを浸透させていくかというアプリケーションの話がメインなので、ちゃんと読めば絶対面白いと思っています。
 3ジェレミー・ハンター氏:ドラッカースクール准教授。経営者に瞑想を指導している

(おまけ)

A:ただ、日本でも昔からラジオ体操とかあったじゃない。
小島:ああ、確かに。
A:あれね、今考えるとわりといいんだなあ、と思っていて。ラジオ体操を真剣に、自分の身体に意識を集中しながらやると、相当あれ行けると思うよ。
小島:確かに。わかる(笑)
A:あれ、本気でやるとえらく疲れるらしいんだけど、そんなに力入れなくても自分の全身に意識集中してやるといいのかな、と。
小島:結構スッキリしそうですね。
A:あとは「ストレングスファインダー」を書いたトム・ラスさんが最近「EatMove Sleep」という本を出していた。要は「みんな運動しろ」と(笑)
小島:ああ。
A:「体を動かせ」と、エグゼクティブは特に。「仕事しているときに座っているのは死への近道だ」みたいな、そんな感じなんですよ。
小島:(笑)
A:だから、オフィスも椅子をなくすっていうのはわりと面白いかもって思っているんだよね。うちのオフィス、そこまで提案するに至ってないけど。
小島:(笑)
A:でもそういう、立って仕事もできる昇降可能なテーブルとかも今あるらしくて。
小島:へえ。
A:立って会議をする会社っていくつかあるし、そもそも椅子がない会社って面白いかもしれないな、と思って。
小島:(笑)メタボが改善されたりするかも。
A:されるでしょう。たまに座っていいけどね、みたいな感じで。
小島:でも、確かにずっと座っていて、首が曲がった状態でパソコンを眺めている人多いですもんね。
A:そうそう、姿勢はわるくなるし、「いいことない」って言われてみたらそうだよな、という気はするよね。そういう、特別に運動するというより、そもそも歩くとか立って仕事するとかやってみても面白いな、とは思っているんだけど。
小島:確かに、小さいところから。じゃあ、また何か編み出したら教えてください。
A:はい(笑)
<おわり>